三澤ブログ(アンリアル)

漫画・映画・ゲームにアニメ、都市伝説に陰謀論。現実世界で疎まれる「もうひとつの現実(=UNREAL)」から、世の中を見つめ直します。

シン・ゴジラの“シン”とは何なのか?

ようやく『シン・ガッズィーラ』……失礼、『シン・ゴジラ』を観てきました。

アメリカ暮らしが長かったもので、発音に乱れがあった事をお詫び致します。

 

Twitterや口コミで以前から評判は上々でしたが、やっぱり面白かったです。

「人間がゴジラを撃退する。でもゴジラを生み出してしまったのは人間だよね(だから殺す)」というニヒリズムなテーマには第一作目のゴジラへのリスペクトをひしひしと感じ、人類の後ろ暗い過去、つまり「SIN(罪)」としてこの作品の根幹を担っていました。

しかし、“シン”という言葉には他にも意味が込められているように思えたのです。

 

ここからネタバレですが、大量の炎を口から吐き出し切ったあと、ゴジラは顎をガバッと開いて紫色のレーザーを放つシーンがあります。

その光線は六本木や銀座を一瞬で壊滅させ、あっという間に火の海と化す東京。

これまでゴジラへの対応がグダグダな政治家たちを笑っていた観客もすっかり黙り込み、変わり果てていく東京を前に劇場内の空気が明らかに変わったのを覚えています。

また、ゴジラを頭上から狙う戦闘ヘリには背びれから無数のレーザーを、さらに尻尾からも攻撃範囲の広いレーザーを放ち、ゴジラ=口から炎を吐く怪獣という固定概念をすっかり崩された我々には戦慄が走るばかりでした。

 

映像を観たまんまの感想はこのへんにして、この『シン・ゴジラ』で個人的に印象深かった点について話します。

 

 

●1954年には無かったが、2016年にはあるもの

第一作目が公開された1954年の時点で、ゴジラっていうのは水爆や原爆の脅威を表すシンボルだったんですよね。口から吐く放射能火炎で街を焼き払い、放射能を悪用した人類に鉄槌を下す存在。

しかし、炎ではなくレーザーさえも撒き散らす2016年のゴジラは現代兵器の象徴なのではないのかと。

ここでいう現代兵器とは、もちろん『レーザー』です。

晴れの日に虫眼鏡で紙を焦がしたり、手術で患者の皮膚や腫瘍を焼き切る……ああいったレーザー光線の威力を高めていったら、街も人も容易にぶっ壊せる破滅の光になるわけです。

そんな兵器なんて実際あるわけない、と人々へ誤認させる役割を果たし続けているのがガンダムスターウォーズのようなSFやロボットアニメなんですが、アメリカが発端の、宇宙へ飛ばした人工衛星からレーザーを発射して敵国からのミサイルを破壊する迎撃システムの名前は、事もあろうに「スターウォーズ計画」(戦略防衛構想)でした。

一方、地上でもレーザー兵器の開発は進んでいて、アメリカ海軍や日本の防衛省(「高出力レーザーシステム」で検索)などが着々と準備を進めています。

その高い威力だけでなく、平均で1発2,000万円以上するミサイルに比べると、レーザーなら1発100円程度の電気代しかかからない圧倒的ローコストも、実装に拍車をかける理由のひとつだと聞きました。

つまり、1954年のゴジラが核の炎なら、2016年のゴジラはレーザーの脅威を暗示する存在だという事になります。

 

また、終盤のゴジラ討伐では東京駅周辺をドローン(無人爆撃機)である『プレデター』が飛び回ったり、ゴジラを活動停止へ追い込む手段として「血液凝固」が採用されました。

「血液凝固」について、これは『癌』のメタファーであると自分は見ています。

企業の公式発表が半身浴や40℃以下の入浴を勧める理由。適度な水分補給の水分量を「適度」に留めておく理由。

レーザーを撒き散らす2016年のゴジラは、2016年らしく(人為的な)癌でトドメを刺されたわけです。 『オキシジェンデストロイヤー』という原理のあやふやな兵器ではなく。

そのため、ゴジラ=現代人の典型という見方も出来ます。

 

 

シン・ゴジラの“シン”とは何なのか?

兵器は核からレーザーへ。 レーザーだけでなく、人間を殺傷する手段も、これまで盲信し続けてきた常識も常にアップグレードを重ねていく。

そのため、“シン”には「進」の字をあてると自分はしっくりきます。つまり『進・ゴジラ

パッと見は気づかないけれど、テレビや新聞には出ない場所で日々進化を続けている脅威。

また、 『シン・ゴジラ』ではゴジラが数種類の形態へ変化します。

まずゴジラは、地を這うトカゲのようでありながらエラを持つ第二形態で蒲田へ上陸するのですが、その姿はまるで魚、古代から深海に棲むサメ『ラブカ』を彷彿とさせます。

そのラブカから、これまで地を這っていたゴジラは徐々に進化し、二つの足で人間世界を蹂躙するに至るのです。

 

また、第二〜第三形態のゴジラは体の一部に羽毛のようなものをまとっていた記憶があるのですが、これは「ティラノサウルスは実はウロコではなく羽毛に包まれていた」という近年の学説に基づいたデザインなのでは?と感じました。

やはり、1954年と2016年の常識は違うというわけです。

 


●衝撃のラストから始まる未来

先日の都知事選に出馬し、過去に日本の都道府県の数も答えられなかったアホが「ネットは裏社会だ」と言い張っていますが、ネット=裏社会というよりは「ヤバい店やセミナー会場が入口を開放しているにもかかわらず、単に一般人が気づかない・見つけようとしないだけ」です。

シン・ゴジラ』のラストは「ゴジラはまだまだ“進化”を残している、油断するな人類よ」というメッセージで締めくくられました。

「ようやくゴジラ退治は終わった、これから日本を再建していこう」という解釈では浅いです。

 

長谷川博己石原さとみの会話シーンで、背景に大量の六芒星が映っていた光景も忘れません。

これはエヴァから続く庵野秀明の“呪縛”を暗示するとともに、世界の行く末さえ感じさせます。 やはりスゴいです。この映画は。

 

そして我々はこれから何をすべきなのか。何を作ろうとしているのか。

 

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